レテラ・ロ・ルシュアールの書簡
十三話
 第三の魔王は第二の魔王と同じように造られたため、放って置くと生き物の命を奪ってしまう。だから、第二の魔王と同じように結界師によって厳重に守られていた。

 その間にも魔王を入れるための器を探しているのだけど、この一年まったく見つからなかった。

 人間だけでなく、あらゆる生き物に魔王を入れてみたけれど、どの生物も魔王を入れられたとたんに死んでしまう。魔竜は多少なりとも耐性があったからか弾けとんだけれど、耐性がない生き物は魔王が肉体に入った瞬間消えてなくなってしまった。

 初めは、文字通り消失してしまったのかと思ったけど、研究を重ねるうちに魔王が魂を吸い出した後、肉体ごと吸収したのだと分かった。

 僕は研究室の椅子に座りながら、紅説王を窺い見る。王は頬杖をつきながら、椅子の上でうとうととしていた。

 僕が部屋に入っても以前のようには起きなかった。紅説王は最近神経をすり減らしている。元々感受性が豊かな方だから杞憂は多かったけれど、最近は問題が多くてろくに寝れてないんだろう。

 王は無作為に魔王の適性を見ることを嫌った。
 当然だ。無為に殺すのと同じなんだから。

 でも、実験をしないわけにはいかない。王がジレンマを抱えているのは傍目で見ても良く分かった。

 王は最近イライラしていることが増えた。もちろん、僕達には見せないけど、一人でいるときに憤った表情をしている。
 紅説王を悩ませている原因はそれだけじゃない。
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