恋とさくらんぼ

掃除と男手

うるさい掃除機の音に混ざって、スマホが鳴ったのが聞こえた。

桜は掃除機を止めて、テーブルに置きっぱなしにしていたスマホを手に取り確認する。

予想していた通り、メッセージを送ってきたのは桃だった。そして内容も予想通り。

『気にしないで。七時までには帰ってきてね』

そう返信する。今日の夕飯はビーフシチューである。昼に帰ってきた桜が作ったものだ。両親は共働きなので、今は家に桜しかいない。

さて、と気合いを入れ直し、リビングの掃除を続行する。やり始めたからにはこの際、隅々まできれいにするつもりである。

再び掃除機のスイッチを入れようとしたとき、インターホンが鳴った。

小首を傾げながら玄関の扉を開ける。宅配便かなにかだろうか。

果たして、そこにいたのは覚えのある顔だった。
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