優しい彼と愛なき結婚
すれ違った先に

ーー綾人との結婚から逃れたくて、俺と結婚したんじゃないの?それなのに結局は綾人に丸め込まれて、俺ってなに?いらなくね?



暗い部屋で何度も何度も大悟さんの言葉が反復される。


迷惑かけたくない一心で大悟さんに相談できなかった。それこそ間違いだったと、彼の言葉を聞いて思い知った。


私のために結婚までしてくれた大悟さんに頼ってこそ、この結婚に意味があったのだ。


なぜ、気付けなかったのだろう。
ひとりで解決など、できるはずがないのに。


仮に今夜、大悟さんたちが現れなくとも、綾人さんと一夜を共にした私は大悟さんと離れることになっただろう。


それとも?借金を返したことを秘密にして、大悟さんとの結婚生活を続けていた?
そんな最低な女になるつもりだった?


ついた嘘はいつかはバレるし、今夜の私の行いは離婚に繋がったことだろう。


自業自得。
言い訳も、謝罪も、大悟さんに受け入れてもらおうだなんて馬鹿げてる。




「ほんと、バカっ…」



ダブルベッドはひとりでは広すぎて、
住み慣れない新居はひとりでは冷たすぎて、
頭がおかしくなりそうだ。



離婚届は、綾人さんから手渡されたその日に破いて捨てた。


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