優しい彼と愛なき結婚
それぞれの事情

8時30分。
セキュリティーカードをタッチしてオフィスに入る。

「おはようございます」

「おはよ」

「おはよう」


私の挨拶に対して先に答えてくれた方は真中 奈緒(まなか なお)先輩。東京営業所、唯一の事務職だ。

上品さが溢れるボブスタイル、真っ赤な唇で大人な女性。なにより豊満なボディーが魅力で、女の私でも惚れるカッコいい女性である。年齢は不詳だ。彼女曰く女性に年齢は聞くものではないとのことで。


「目黒工務店さんからメールが入ってるが、俺が対処しておいたから返信不要だ」


そう声を掛けてくれたのは、市野 真琴(いちの まこと)先輩。
七三分けの前髪。ストレートな襟足短めな黒髪で、真面目な性格だ。東京営業所の営業成績トップに10年連続で君臨している。全社ベースでも相当優秀で、厳しいが面倒見の良い先輩だ。

年齢は大悟さんと同じくらいかな。


残り2名は課長と今年の新入社員だが、壁にかかったボードに今朝は取引先へ直行と書かれていた。


「どう?新婚生活は?」

「順調にいってます」


隣りに座る奈緒さんが身を乗り出してくると、ふんわりと甘い香水の香りが漂う。


「行ってきますのキスしたの?」

「なっ…」

「その様子だとしてないわね。明日は優里ちゃんから仕掛けなさ。いいわね?」


そう言われても頷けるものですか。


< 72 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop