一途な御曹司と16歳の花嫁
父はいま、体調を崩して入院している。


だから、お屋敷での父の仕事はできる限り私がやらせてもらおうと思っていた。


高校生の私にできることはあまり多くは無いかもしれないけど、それでも新海家のために何かしたかった。


「いいのよ、そんなこと、気にしないでね」


奥様は優しくそう言ってくれたけど、それでは気がすまない。


「いいんじゃないか、やりたいんならやらせてやれば?嫁なんだし」


伊織さまが、ようやく口を開いた。


「はい、なんでも言ってください」


「手伝いもいいけど、俺の世話もちゃんとしろよな。嫁なんだから」


クールな顔で意味ありげなことを呟く。


「は、はあ、と言いますと」


嫁の仕事ってなんだろう。このお屋敷にはメイドさんだってたくさんいるし、それ以上に私に彼のどんなお世話ができるんだろうか。



「そんなこと、親の前で言わせるなよ」


「?」


「ぽかんとするな、ほらこぼしてるぞ」
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