クリスマスのシンデレラ
後輩の麻紀が必死に隣のナースにしがみつく
嫌な予感がする





「なんと!麻紀が麻酔科の友成君と
結婚するんだって~!!
   
パンパカパ~ン♪        」







そこにいた7人のナースが奇声を上げて
一斉に喜んだ

それをきっかけに
元々お酒好きなナースが集まっているので

小さな居酒屋のテーブルには
どんどん酒が運ばれ空気は桃子の
誕生パーティーから一気に麻紀の
婚約おめでとうパーティに変わって行った



「いつからか」
とか
「隅に置けない」




と先輩ナースや同僚の野次を真っ赤に
なりながらでも嬉しそうに受けている
麻紀を見つめながら






これでみんなの興味が自分から逸れた事に
桃子は内心ホッとしていた



そこに早苗が熱燗を持って
桃子の隣に座った






「楽しんでる?」

「ええもちろん!」







早苗は桃子にお酌しながら言った





「何もこんな時に言う事ではないのにね
麻紀も気がきかないわ         」



桃子も早苗に酌を返して言った


 
「でも  
盛り上がってるからいいじゃない
実際あたしの誕生日なんかどうでも良い事だし
こっちの方がよっぽどおめでたいわ  」





この早苗とは今の病院に新人で
勤務を始めた頃からの同期で親友だ
彼女には何でも話せた



早苗は2年ほど前に幼馴染みと結婚し
今は看護婦の間でも婦長候補とみんなから
慕われていた



それに比べて自分は看護婦の中でも
桃子は正看護婦の指示を貰って
患者の世話をする准看護師だった


早苗に比べると
ただ働いている年数が長いだけの
あまりキャリアには繋がらないものだった


しかし何の責任もなく給料もシフトも 
それなりに満足していたため
なんとなく最近ではズルズル
月日が流れていくだけだった



「ところで新藤先生とはどうなのよ?」



その名前を出されて桃子の胃は半分せりあがった



「どうしてそこに新藤先生の話が出てくるの?」




早苗はウインクして言った

 

「隠しても駄目よあなたが回診の時の
新藤先生を見る目ったら        」




ほんのり酔っぱらっている早苗が
両手でハートを作ってケタケタ笑った
それを見て桃子も少し笑った





「私・・・・
そんなにわかりやすい? 」
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