あなたの愛に包まれて
剣持は千晃の才能を知っていた。
ほとんどの書類に目を通す千晃は、その内容を頭に入れている。
だからこそ、担当者が持ってきた企画が自分のもとに企画案を出していないものだと知っていたのだ。
財閥の秩序を守るためにも、厳しくすることも必要だと千晃もすでに知っていた。

「少し、時間が空きましたね。昼食にしましょうか。」
「しばらく、ひとりにしてください。」
「・・・承知しました。」
千晃は社員に厳しいことを言った後や、うまくいかないことがあると自分の部屋にこもっていた。

自分の心が真っ黒に染まってしまいそうで怖い千晃は、力がくれたちぎり絵を見ながら黒く染まりそうな心に光を戻せるようにと願う。

もう一度匡祐に会うまでは・・・黒に染まるわけにはいかない。
そんなことを考えながら千晃は今日も一人、葛藤していた。
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