あなたの愛に包まれて
「ゆっくり体を治しなさい。」
父からのねぎらいの言葉に千晃は顔を上げる。
「すまなかった。今まで。」
耳を疑い父の話を聞く千晃。
「すまなかった。」
千晃の父は深く頭を下げた。
そんな父に千晃が手を伸ばそうとする。

うまく力が入らず千晃が全身のバランスを崩して父の方へ倒れそうになるとすぐに千晃の父が支えた。

匡祐よりも早く、娘の体を支える父。

千晃が生まれて初めて感じる父のぬくもりだった。
父は千晃の体を少し遠慮がちに抱きしめる。

生きている・・・そう実感しながら。

「すまなかった。今まで。千晃。」
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