25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
それから数日が過ぎた。何事も起こる気配もない日常に、私は徐々に落ち着きを取り戻していた。


その日、夕飯の買い物から帰宅した私は、家に入る前に、郵便受けを確認した。何通かのDMやチラシに混じって、1通の封筒が目に入った。見てみると「西野朱美様」と書かれたその封筒には、切手はなく、宛先の住所も差出人の名前もない。


私は慌てて、その封筒を手に玄関に入った。心臓が早金のように鳴っているのがわかる。


荷物を置くのももどかしく、封筒を開封して、中を確認すると、1枚の便箋が。そこには


『会って話したいことがあります。明日13時に『クラウン』にてお待ちします。  内藤』


との文字が。それを読んだ私は、サッと血の気が引く自分を自覚していた。


正直に言えば、私は内藤に嫌悪感を抱いて別れたわけじゃない。だけど、そもそも内藤に心奪われ、身を委ねたことが過ちだったと気付いて、別れたのだ。


だから、もう内藤になんの未練もないし、会いたくもない。こんなことを言われても、ただ迷惑なだけだ。


と言って、この呼び出しを無視することは可能だろうか?この封筒の状態は、直接我が家のポストに投げ込まれたことを示している。そして、そうしても私以外の家族が、この手紙をまず手にする可能性が極めて低いと男に思われていることも示している。


つまり内藤は、私の自宅の場所と生活スタイルを把握しているということになる。あの日の内藤との出会いは偶然ではなかった、と判断するしかない。


私は恐怖と苦悩に沈んだ。
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