25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
「夫の所に行くと言って、休みを取ったはずの私が、地元で他の男性と一緒にいた。もう怪しさ100 %ですよね。でも、決して嘘を吐いたわけじゃありません。間違いなく、金曜から夫の赴任先に行く予定でしたし、私も子供達も久しぶりに夫に会えるのを楽しみにしてた。でも・・・行けなかったんです。」


「?」


「出発前日、準備も終わり、明日に備えて、早めに休もうかと思っていたら、夫から連絡が来たんです。『すまないが、明日から急遽出張になった。帰りも日曜の夜になると思うから、せっかく来てもらっても会えない。』って。私は呆然となりました。」


そう言った渋谷さんの表情は、本当に悲しそうだった。


「それから少し話をしましたけど、夫は『すまない』と繰り返すだけで、最後は『明日早いから、子供達によろしく。』と言うと一方的に電話を切ってしまったんです。」


「・・・。」


「私は夫の言葉が信じられませんでした。正直、構わず、赴任先に乗り込もうと思いましたけど、子供達の手前、諦めました。もし、子供達の前で修羅場にでもなったら取り返しがつかないと、なんとか思い留まったんです。でも疑心暗鬼は、募るばかりでした。」


「渋谷さん・・・。」


「それで、思いあぐねた挙げ句、西野さんに連絡を差し上げてしまいました。誰かに聞いてもらいたかったんです。かつての上司であり、また現在も会社に在籍され、夫のことも知っている西野さんにならと、思ったんです。それが・・・成川さんにも西野さんにも、ご迷惑をお掛けすることになってしまって、配慮が足りませんでした。」


そう言って、渋谷さんはまた、頭を下げた。
< 121 / 156 >

この作品をシェア

pagetop