25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
「ただいま。」


「お帰り。」


次男の清司が帰って来た。就職して間もない彼は、まだ残業もなく、6時過ぎには帰って来る。長男は、就職と同時に家を出たが、清司は通勤が便利だったこともあり、自宅通勤を選んだ。


ス-ツ姿も初々しい次男。いずれはそうなっちゃうのだけど、子供達がこの家から姿を消してしまうのは、正直寂しい。そう思っていたら、清司がここから通いたいと言ってくれた時には、本当に嬉しかった。


子離れ出来ないバカな母親と言われてしまえば、それまでだけど、正司を見ても、1度家から離れた男の子なんて、顔を出すどころか、電話だって滅多に掛けて来ないんだから。


「お腹すいたでしょ。先にご飯食べちゃう?」


「いや、父さんも、もうすぐ帰って来るだろう?待ってるよ。」


そう言うと、着替えに2階に上がっていく次男。人並みに反抗期はあった息子達。 


私も随分手を焼かされたし、夫にも生意気なことを言っては、ケンカしてたけど、大学受験が始まるころには、それも収まり、社会に出た今では、荒波に揉まれ、働くということの厳しさも知り、父親への尊敬の念を深めているようだった。


次男の言葉通り、夫も7時くらいに帰宅。この子達が小学校低学年くらいの頃だから、今から15年ほど前のことになるだろうか。


その頃の夫の生活は凄まじかった。午前様の帰宅なんて珍しくもなく、休日出勤、出張もしばしば。私も子育てに追われてたけど、とにかく夫の生活リズムは恐ろしいくらい過酷だった。側で見ていて、身体を壊さないか、心配で仕方なかった。


それがいつしか、帰宅時間が午前を越えなくなり、10時になり、9時になり・・・今くらいの時間に落ち着いてから、もうどのくらい経っただろうか。


「早く帰って来られるということは、会社としては決していいことではないんだけどな。でも俺もあの頃はまだ若かったし、役職にも就いて、家も建てて、モチベ-ションも上がってたから、何とか乗り切れたけど、今あれをやれって言われても絶対に無理だしな。朱美が支えてくれてなかったら、間違いなく死んでたよ。今更だけど、感謝してる。」


なんてちょっと前に言われたな、嬉しかった。


食卓についた夫と次男は、晩酌をしながら、今日あった出来事などを話している。その姿が本当に微笑ましかった。
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