25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
リビングに入ると、床に正座しようとする妻。


「ちゃんと椅子に座ってくれ。」


「でも・・・。」


「いいから。」


俺のその言葉に、妻は遠慮がちに椅子に腰掛ける。


テーブルの上には、妻の心尽くしの手料理が並んでいる。何事にも手を抜かず、夫に尽くし、子供を愛してくれる自慢の妻だった。なのに・・・。


次の瞬間、俺は妻に向かって、土下座をしていた。


「朱美、すまん!」


そんな俺を呆然と見つめる妻。


「昨日からずっと泣いてたんだろ?ずっと苦しんで、自分を責めてたんだろ?俺になんて詫びようか、悩んでたんだろ?俺になんて責められるんだろう、そう怯えてたんだろ?お前だけに辛い思いをさせた。すまん、許してくれ。」


「ちょっと待って。なんで隆司さんが私に・・・。」


戸惑う妻に


「昨日のお前の告白は、それはショックだった。身体が張り裂けそうなくらいの怒りも感じた。だけど・・・俺に朱美を責める資格なんて、ありゃしないんだ。」


「それって、どういう・・・。」


そう言いかけた妻は、次の瞬間、ハッと俺の顔を見た。


「隆司さん、まさか・・・。」


その妻の言葉に、俺はガックリと肩を落とすと、意を決して言う。


「その通りだ。今から15年前、俺は愛する妻であるお前と、可愛い盛りだった2人の息子を裏切ってしまった。それを今の今まで、隠し通して来た。本当に申し訳ありませんでした・・・。」


沈黙がリビングを包む。土下座する俺と、それをなんとも言えない表情で見つめる妻。昨夜とは完全に立場が入れ替わって、でも同じ光景がそこにあった。


「嘘、でしょ?だって、15年前って言ったら、あなたが本当に寝る間もないくらいに忙しかった時期じゃない。そんな時に浮気なんて・・・。」


まだ、信じられないと言うように呟く妻に


「そうだ。あの殺人的とも言える忙しさの最中、一所懸命にそんな俺を支え、2人の子供達を懸命に育ててくれてたお前を裏切って、俺は10歳も年下の若い女と不倫を楽しんでたんだ。」


頭を上げて、そう告白した俺を見つめていた妻は


「信じられない・・・。」


とポツンと言うと、その瞳からは、一筋の涙が溢れ出して来た。その涙に、俺の心は締め付けられる。
< 27 / 156 >

この作品をシェア

pagetop