25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
「今日1日、時間をもらったのは、友達と会う約束してたからなんだ。そいつは離婚経験者でさ。覚えてるかな、4年前、朱美に感謝の気持ち伝えることにした、そのきっかけをくれた奴がいたって、話したよな。」


うん、覚えてる。


「本当は、もっと早くそいつと話したかったんだけど、相手が出張があったりして、なかなか時間が合わなくてな。やっと今日会えたんだ。」


「・・・。」


「いろいろ話聞いてもらって、『なんだよ、結局、全部お前のせいじゃねぇか』と言われてしまった。俺がプロポーズの時の言葉をキチンと守っていたら、こんなことにはなってない。1週間考えて、自分でもそう思ってたんだけど、ダメを押されたよ。」


そう言って、一瞬苦笑いを浮かべた夫は、でもすぐに表情を引き締めた。


「朱美。やっぱり俺達、ケジメをつけるべきだと思う。昨日、お前が言ってた通り、今の俺達にはもう信頼関係がない。信頼関係のない相手と、ひとつ屋根の下で一緒に暮らすのは、やっぱり無理だと思う。」


そう言って、真っすぐに私を見る夫。その視線に応えるかのように私は


「はい。」


と言って、頷いた。


「朱美、今まで本当にありがとう。そして・・・約束を守れなくて、すまなかった。」


そう言って私に頭を下げる夫。


「いいえ。私の方こそ、至らぬ妻で、申し訳ありませんでした。でも、今まで・・・幸せでした。ありがとう、ございました。」


こう言って、頭を下げた瞬間、涙が溢れ出して来る。


ガタン、部屋の外で音がしたと思うと、階段を駆け上がって行く音がする。だけど、私も夫も、その音を追うことは出来ず、ただ涙を流すことしか出来なかった。
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