25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
報告した友人達は一様に大変だったね、落ち着いたら1回会おうよ、と言ってくれたが、すぐにすぐ、その言葉を実行に移してくれる人はいなかった。


向こうにしてみれば、なかなか声をかけ辛いだろうし、さりとて私の方から誘うのも、気が引けて、結局今日の予定は何もない。


仕方なく、ボーとテレビを見ていたが、芸能人の離婚や不倫のニュースが流れたりして、居たたまれない思いにかられ、結局、お昼過ぎに家を出た。


出てはみたものの、行くあてがあるわけでもなく、少し街をブラついてみたが、気が付くと、私は勤めているお店に向かっていた。


お店に入って、プラプラしていると


「成川さん。」


と声を掛けられた。渋谷さんだ。


「どうしたんですか?」


「ええ、ちょっと近くまで来たんで。お店のことも気になったんで・・・。」


まさか暇を持て余したからとも言えず、私が心にもない、お利口さんな返事をすると


「真面目ですねぇ、成川さんは。でもお休みの日は、しっかり身体を休めるのも仕事のうちですよ。」


「はい・・・。」


「って、若い頃勤めていた会社の上司によく言われました。」


と言って、渋谷さんは笑う。


「明日は土曜日ですから。私はお休みで、申し訳ないんですけど、やっぱり土日は平日とはお客様の入りが違いますから。今日はしっかりや休んでいただいて、明日からはまた、よろしくお願いします。」


そう言い残して、渋谷さんは私から離れて行く。渋谷さんの笑顔は優しい。その笑顔に癒やされる思いで、見送り、私は少しして店を出た。


私が内藤と初めて外で出会った時


「休みといっても、やることもないし、無給でもいいから、仕事に行ってた方がマシだ。」


と苦笑いしていたのを思い出した。まさか、あの時の内藤と同じ境遇になって、その心境がわかる日が来るとは・・・。


私はその皮肉な現実に、ため息をついてしまった。
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