守る理由。
蒼司「…だが、」

『別に…家族とか友達とか…居ないわけじゃないですけど、執着とかありませんし。一緒に居たいとか…そう言う気持ちも毛頭ないので。』



スプーンを口に運びながらそう答え、軽く目を伏せる。

…家族も、友人も、正直僕にとってはもうどうでも良いのだ。

唯一どうでも良くなかった友人がついさっきどうでも良くなった…というより、そう思いざるを得ない状況に陥った…。

…それならもう、接点を持たないのが一番良いのではないだろうか。

それが僕の中での結論だったのだ。



蒼司「…もう、戻ることは出来ないんだぞ。」

『その方が寧ろありがたい。』



こう答えなければ、最後に会うか何かさせてくれていたのだろう。

だが、今僕が彼らに会ったところで…皮肉以外を言える自信なんてない。

それなら会わないままでいた方が、お互い幸せなのではないか。



僕の求めているものを探すための旅…って、僕は勝手に思おっかな。



…なんて思ったものの、自分でも自分の求めているものなんて分かっていない。

分かっていなくても…今考えていることを忘れたいがために、そんなことを思うしかなかったのだ。

…馬鹿らしいと罵られたとしても、それ以外の方法が考えられないくらい…僕の心は壊れかけていた。



…全て忘れられたら、楽なんだろうな。楽しかったことも、辛かったことも…璃奈さんや…彼らとの思い出も…全て。



…こういう時に思い出すのは、何故かやたらと幸せだった過去ばかり。

普段は苦しかったことばかり覚えているというのに…人の脳の構造というのは、如何にも難しいものである。


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