嘘つき社長と天使の恋物語
「ごめん・・・」

 ギュッと和也を抱きしめて、悠大はそっと頭を撫でた。


「そうか、今やっと分かったよ。お前を見た時から、何となくサキと重なっていた。初めて私に怒鳴りつけてきた態度も、あの挑発的な行動も。・・・お前は、一樹なんだな? 」


 泣いている和也はそっと頷いた。


「そうか・・・。でもどうしてなんだ? どうやって、来たんだ? 」

「・・・和也さんの体借りているだけだよ。・・・父さんに、幸せになって欲しいから。・・・俺と母さんの事をずっと忘れられなくて、苦しんでいるから。・・・忘れないのは嬉しいけど、この世で生きている父さんが幸せにならないのは、死ぬより苦しい。・・・もっと・・・もっと一緒にいたかったけど。・・・俺は、母さんと一緒に逝くことを決めてたから。だから・・・父さんはもう、幸せになっていいんだよ。・・・」


 悠大は胸がいっぱいになった。

 死んだサキと一樹をずっと忘れられないでいた。

 だがそれは、悠大が忘れてはいけないと決めつけていた事だった。

 亡くなった人がその先で、どうなるかなんて考えもしなかった。

 自分が苦しむように、亡くなった人も苦しんでいるなんて考えもしなかったのだ。



「ごめんな、一樹。私は、ずっと自分を責めていた。お前とサキを助けられなかったと。だから、誰とも再婚なんてしてはいけないと思い込んでいたんだ」

「そんな事ないよ。・・・だって・・・残された人が幸せになる事が、死んだ人の喜びなんだから・・・」

「そうだな・・・」

「姉ちゃんなら、俺も母さんも認めるから。父さんだって、本当は姉ちゃんの事が好きなんでしょう? 」


 悠大はドキッとして赤くなった。


「分かるよ。姉ちゃん、とっても魅力的だし。きっと、母さんと同じ天使の血を引いているんだと思うよ」

「え? そうなのか? 」

「姉ちゃんの瞳。紫色なの知っている? 」

「あ・・・いや・・・。ちゃんと、見たことがまだなくて・・・」

「ふーん。照れて見れないんじゃないの? 」

「い、いや・・・そう・・・なのかもしれない・・・」


 悠大は照れくさそうに頭をかいた。


「ねぇ、本当の気持ち教えてよ。ちゃんと、父さんの口から聞きたいから」

 悠大はちょっと恥ずかしそうな目をした。
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