嘘つき社長と天使の恋物語
「もしかして、あんたが本当に欲しいのって。本当の愛なんじゃないの? 」
「はぁ? 」
「それがほしくて、あんたはお金を手にして探しているだけじゃないの? 」
「ばか言わないで。愛なんて…信じていないわ」
ちょっとだけ、芹那の横顔が寂しそうに見え、和也は芹那をギュッと抱きしめた。
「な、なんなの? 」
突き放そうとした芹那だが、抱きしめられる和也の腕の中は何故か心地よくて…
解らない気持ちが込みあがってきて動けなくなった。
「あんたのハート、今ちょっとだけ動いたよ」
「はぁ? 」
「自分でも判っているんじゃねぇの? きっと、初めて感じたんだと思うよ。人の腕の中が、とってもあったかいって」
ギュッと抱きしめられ、芹那はドキッと胸が高鳴ったのを感じた。
それと同時に何か判らない、モヤっとした気持ちが込みあがってきた。
「…あんたが殺したのは、結婚した夫と育ての両親。…だよね? 」
そう言われると、芹那はキュンと胸が痛んだ。
「夫を殺したのは、浮気が許せなかった。別に、あんたの両親にひき逃げの事をを話した事を怒っていたわけじゃないんだよね、本当は」
違うと否定したいのに、何故か芹那は素直に頷いてしまった。
「そして、育ての両親を殺したのは。愛をくれなかったって、思い込んでしまったから…だよね? 」
今度は素直に頷いてしまった芹那。
「まったく。なに勘違いしているんだよ! 本当に愛していないのは、あんた自身の事だよ。あんたは自分が一番嫌いだから、みんなが嫌いになっちゃうんだ。殺しちゃった夫も、あんたの事本当に愛してくれてたんだよ。浮気なんてしてない、あの写真はただ誘われただけで。実際には、ホテルに入ってもいないし何もなかったんだよ」
「…じゃあ何で、否定しなかったの? 」
「否定していたじゃん、あんたが聞き入れなかっただけ。勢いに任せて、そのまま殺しちゃっただけだよ」
何も言えなくなり、芹那は俯いた。
「それから、あんたの育ての両親も。あんたの事、実の子供と同じくらい愛してくれていたよ。だから、あんたに立ち直って欲しかっただけだよ」
芹那は育ての両親を、殺した時の事を思いだした。