嘘つき社長と天使の恋物語


 そして・・・。

 翌朝になって。


 まだ誰も動き出していない早朝に、和也と芹那はホテルを出た。



 目覚めた芹那は派手なメイクも落として、ほぼすっぴんのままだった。


 和也は特に何も言わず、芹那が歩く方向に一緒に着いて行った。





 そのまま歩いて…。


 芹那は警察署の前にやって来た。


 着いてきた和也にそっと振り向き、芹那は穏やかな笑みを浮かべた。

「ここでいいわよ。もう、逃げたりしないし」

「うん。…じゃあ、これも一緒に持って行って」

 
 和也が渡したのは携帯電話だった。


「これに、昨晩の会話が録画してあるんだ。証拠として出すか、出さないかは任せるから」

「ちゃっかりしているのね。有難く、受け取るわ」

 芹那は携帯電話を受け取った。

「貴方って何者なの? あんな古い証拠まで持っているなんて」

「俺は…13年前の、事故で死んだ一樹だよ。あの時は、2歳だったけど」

「死んだ? 今ここにいるのに? 」

「そっ。ここの警察署の刑事さんが、怪我して意識不明になって。体借りているだけ。でも、もう返さなくちゃならないから。本当の和也さんが、目を覚ましたいって言っているし」

「ふーん。意味わかんないけど、ここだけの秘密にしておくわ。有難う」


 芹那は階段を登り始めた。


「あ、そうだわ」


 足を止めて芹那が振り向いた。


「もし、嶺亜に会ったら伝えてくれる? …今までごめんって。そして、有難うって」

「分かった、伝えるよ」



 芹那は階段を登って警察署へ入って行った。


 和也はフッと一息ついて歩き出した。









 

 
   
 

 


 
  








  

 

 



 


 
 

 
 
 
 


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