エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~


 父も兄も引き止めはしなかった。それほど日菜子が深く傷ついているのを知っていたからだ。
 そのことがトラウマになり、日菜子は決意した。

 女の子は強くったって仕方ないのだ。普通の女の子として生きたい。

 筋肉質だった身体はトレーニングを辞めると、次第に女の子らしい体つきへと変化した。身なりも女性らしく整えた。

 おそらく昔の知り合いが見たら、日菜子だとは気がつかないだろう。その変身ぶりは傍でみていた美穂も驚くほどだった。

 けれどどうしてもあのときの男の子が言った言葉が頭から離れず、日菜子は大きなセルフレームの眼鏡をかけ素顔を見られないようにしてきた。

 大学生になるとひとり暮らしをはじめて柔道から生活を切り離した。そのころになれば、もう強い日菜子を知るものはいない。

 一時期に比べれば周囲とのコミュニケーションも取れている。周りに合わせてやっていくすべも分かっている。

 それでもやっぱり、セルフレームの眼鏡を外せずに今に至っていた。

 そのことがまだ彼女の中のトラウマが現在も進行中であるということの現れだ。

 外ではあまり意見も言わず、周りにあわせてニコニコ笑いうなずいている。波風立てないように、誰も不快にしないようにといつも気を遣っていた。

 普段の彼女は言いたいことの半分も、言っていないのではないだろうか。

 美穂はそんな彼女が今も無理をしているのではと、心配だった。もともと明るくて優しかった日菜子を知っているのでなおさらだ。

 だからときどき今日のように箍が外れたかのごとく、本来のはっきり物言う日菜子が顔を出すのではないかと思う。正義感にあふれる、まっすぐな日菜子が。

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