エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
(こうやって、信頼してくれるのはうれしいな)

 気合いを入れ直した日菜子は、早速図面の修正に取りかかった。

 焦りながらあちこちある修正箇所を直していく。チェックする時間はほとんどないので、ミスのないように慎重にかつ素早く作業を進める。

(あぁ……もう、絶対嫌がらせだ! でも……これすごくいいな)

 作業の手を止めずに、図面からできあがる建物を想像する。

 新しく建て替えることになっている図書館の図面だ。

 ここは日菜子の通っていた高校の近くで、彼女自身もよく利用していた。公立の建物なので派手な奇抜さは敬遠される。けれど娯楽施設として住民の憩いの場になる場所というのが加味されている。老若男女に受け入れられる、そして長年愛される施設になるであろう。

「やっぱり、すごい」

 拓海本人はいけ好かないけれど、彼の生み出す建物は素晴らしい。図面を見ているだけでもワクワクしてくる。彼の才能は認める他ない。

「おい、出来たのかよ?」

「痛っ」

 丸めた資料で、頭を後ろからポコンと叩かれた。日菜子にこんなことをするのは、職場ではただひとり。

「うん、言われた箇所は大丈夫」

「ん? どういうこと?」

 日菜子の歯切れの悪い返事に、拓海が引っかかったようだ。

「自転車置き場なんですけど」

「それがどうかしたのか?」

 日菜子が指さした図面を、拓海が覗き込んだ。

「実はここだと、こちらの北側の道路から来る人たちには使いづらいんだよね。それで結構適当に止める人がいて。こっちにもそんなに大きくなくてもいいので、自転車置き場があればいいなって」

「……なんだ、やけに詳しいな。どうして?」

 日菜子はこの図書館は当時自分が通っていた高校に近く、よく利用していたことを伝えた。

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