エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
拓海の反応が好意的だったのもあって少しは自信が持てたが、やはりフロアに入るときには過去のことがよみがえり若干緊張した。
しかしそれは取り越し苦労で、花をはじめ周囲にはおおむね好評でほっとして仕事を始めることができた。
思い切ってよかったと思いながら、金曜日に渡せなかった資料を持って席を立つ。
本来ならば依頼された脇坂に渡すべきだが、彼女はまだ出社しておらず、直接西野にも確認したいことがあり、彼を探した。
廊下に出るとすぐに西野は見つかった。しかし隣には金曜日に自分を悪く言った彼の同期も一緒だった。
一瞬ひるんだ。これまでの日菜子なら迷わず踵を返していたに違いない。
けれど日菜子はぐっと顔をあげると西野の方へと足を進めた。
「あれ、松風さん。髪切ったんだ! すごくかわいいね」
「あ……えと、ありがとうございます」
褒められ慣れていない日菜子は、うまく返すことができない。しかしそんな様子の日菜子を西野の同期の男、小松原はジロジロとぶしつけに見てくる。
「え? マジでこれがあの松風さん? えーすげー変身っぷりだな」
近づいて顔を覗きこもうとする小松原から、さっと距離を取る。しかし男はどんどん距離を縮めてこようとした。
「あっ? もしかして西野のこと狙ってるの? だから可愛く変身してアピールしてるんだ」
「おい、やめろよ小松原」
西野が止めたが面白がった小松原はエスカレートしていく。
「なあ、どうせ今まで彼氏なんかいかなったんだろ? すげーダサかったもんな。俺、今の松風さんとなら、イケると思うからちょっと考えてみない」
ニヤニヤと馬鹿にした表情で近づいてくる。
ひどい態度に、西野も強い口調で止めに入る。
「いい加減に――」
「いってー! 痛い!」
苦悶にゆがむ小松原の表情。それもそのはず、日菜子に思い切り腕を後ろにひねられていたのだ。
痛がる小松原と、呆気にとられた西野を前に日菜子はほんの少し「しまった」と思ったけれど、こうなってしまった以上仕方ない。
「今の発言は完全にセクハラです。それにわたしにも選ぶ権利があるので」
(言ってやった!)
日菜子が腕を離すと、小松原は日菜子をひと睨みして逃げるようにして廊下を歩いていった。