我妻教育3
*.*.*.1.水曜日
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〔レストランになる予定だそうです〕

夏まっただ中の8月。

仕事が休みの水曜日。


弟の勇(イサム)からのメッセージに「レストランかぁ…」呟き、スマホを消す。


それより、「ヤバ、時間に遅れそう」
もう来てるかな?
額をつたう汗を拭いつつ、急ぎ足で約束の場所に向かう。

場所は、松葉大学附属病院。


「啓志郎く~ん!ゴメンねェ~、待ったぁ?」

病院のロビーが待ち合わせ場所。


「いや、私も今きた所だ」

お見舞いの花束を持つ姿が、絵になる。

上品な雰囲気が漂う正統派の美男子。

鍛えられた細身の体に馴染んだシワ一つないシャツ、汚れ一つないツヤツヤの靴。
シックで、とても素敵。

松葉グループの御曹司 松園寺 啓志郎くん。

……しまった。
Tシャツにガウチョ、ぺたんこサンダルの自分が恥ずかしい。
髪もレイヤーボブで、襟足が肩に当たって跳ねてもそれっぽく見えるっていう楽ちん重視。

横に並ぶには、ラフすぎたかな。
啓志郎くんは気にしてないっぽいけど。

「8ヶ月ぶりだな」

「うん、そだね」

去年の12月ぶり。

あれから、色々あった。

「…大変だったな。大丈夫か?」
啓志郎くんは、心配そうにあたしの顔を伺う。
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