我妻教育3
*.*.*.3.金曜日
*.*.*.*.*.*.*.*.*.*.*.*.*

「本日は、よろしく頼む」

そう言って、教室に入ってきた啓志郎くんを見て、受講者の主婦たちがザワザワとしている。

色んな年齢層の人が通う料理教室。
最近では男の人の受講者も珍しくないとはいえ、確かに啓志郎くんは目立つもんね。

「こちらこそ。奥の空いてる席にどうぞ」

本当に来たんだ。
忙しいだろうに、わざわざこんなところまで料理を習いに来てくれた。

こうやって、あたしを慕ってくれることは嬉しいな。

料理は、啓志郎くんに、あたしが唯一教えることができることだから。
いつもより張り切った気持ちで、準備した。

啓志郎くんが参加してくれるのは、初心者向けの和食(和定食)1回完結コース。
メニューは、天ぷら盛り合わせ(エビ、イカ、レンコン、サツマイモ)と味噌汁、小鉢(きゅうりの和え物)。


「料理教室に参加するのって初めて!緊張するね、啓志郎さま♪」
甘い甲高い声が教室に響いた。

マイラ姫だ。

急遽、マイラ姫も受講することになっていた。
啓志郎くんの申し込みで満員になっていたけど、どうしても一緒に受講したいとのことで、半ば強引に…(笑)

マイラ姫とは、金峰下 舞羅さん(高校2年生)。
キンポウゲ食品という、食品業界最大手のグループ会社を傘下に持つ金峰下コンツェルンのお嬢様だ。
< 20 / 102 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop