我妻教育3
もう関わらないでって言ったのに。

あんなに息せき切って。どうかしてるよ。

汗に乱れてもカッコいい、この先も間違いなく順風満帆な若い御曹司が。

あたしなんかに決めたら勿体ないって、何度言えばいいの。

啓志郎くんの為にならないんだって。
あたしの決心、ぶち壊さないで。

愛とか恋とか分かんないけど。
結婚もよく分かんないけど。

あたしだって、啓志郎くんのこと大好きなんだよ。

「…未礼、どうした、なぜ泣く?
どこか痛むのか?大丈夫か?」
啓志郎くんが不安げにあたしの顔を覗き込んでくる。

大丈夫じゃない。

心配した目で、優しい声で、あたしに触れないで。

手のひらの熱で、掴まれた肩が溶けそうだ。

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