5時からはじまる甘い罠。
背中からかけられた声がわたしに向けたものだと気づくのに、たっぷり20秒はかかった。
振り返るとそこに、見たことのない男子が立っていた。
男子コートからここまで走ってきたらしく、形のいい額に少し汗が滲んでいる。
わたしは少し怖くなって息を止めた。
誰かからまともに声をかけられたのなんて久しぶりだったし、
この人は普段見かけたことのない、多分、合同で授業を受けている隣のクラスの人なんだろうけど、
でもそういうことが恐怖の理由じゃなくて。