大和撫子物語
転校して二週間もすると、エレナは学校にも日本での生活にもだいぶ慣れた。中堂蛍(なかどうほたる)、東結衣(あずまゆい)という友達もでき、毎日を楽しく過ごしている。

そんなある日のことだった。四限目の世界史の授業が終わった後、「今日は中庭でご飯を食べようよ!」と結衣が提案する。外はいい天気だったため、エレナと蛍はもちろん賛成した。

「エレナ〜!ちょっと職員室に来てくれ〜!」

お弁当を持ち、中庭にさあ移動するという時にエレナは世界史の先生に呼び止められる。

「先行ってて」

エレナは内心文句を言いながら、世界史の先生のあとについて行った。そして前に休んだ時の課題プリントをもらい、急いで中庭に向かう。

「プリントなんて、教室に持って来てくれればいいのに……!」

四十分しかない昼休みの時間が減ることに、エレナはブツブツ言いながら中庭に向かって歩いた。校庭ではもうお昼ご飯を食べ終えたのか、男子生徒たちが野球をしている。
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