COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―


気付けば私は、リビングに置いてある棚の前にへたり込んでいた。

ガラスの観音開きのその棚の扉は開けられ、
目の前に散らばるように置かれたそれに目を落とす。

映画の半券。小さなリングの付いたシルバーのネックレス。
ワインレッドの布地の表紙の日記帳。

棚の中から引き出されたその箱の中にはまだ色々な思い出達が入っている。

ワインレッドのその表紙に手をかけて、ゆっくりと開く。
すると、表紙に挟まっていた一枚の写真が姿を現した。

そこには幸せそうな笑顔を浮かべる私と、“彼”が映っていた。


それに手を伸ばす。
その時、部屋の中にけたたましい音楽が鳴り響いた。

我に返ると、床に無造作に放り出されたスマートフォンを手に取った。

そこには春田くんの名前が表示されている。


「…もしもし」


『本郷さん!?今どこですか?』

電話口の彼は酷く 狼狽(うろた)えていた。
それもそうだろう、恐らく約束の時間はとうに過ぎている。
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