COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
『理央と勇太か……うん、100%ないね!
理央みたいな可愛らしいいい女の子にあーんな悪魔なんて釣り合わない!
さ、皆支度できたー?帰るよー!』
昭香さんのいつも合図で鞄を手に取った。
エレベーターに乗り込むと、昭香さんが口を開いた。
『…そうだ。
今日企画部の上村ちゃんからチャット飛んできたんだけど、
合コンのメンツが足りないみたいでさ』
そう言うと昭香さんは顔だけでこちらを振り返る。
『私日程合わなくて行けないんだけど』
イヤな予感。
『花緒どう?』
…やっぱり。
昭香さんはたまに、
私が室長のことを好きなのを知っていてわざとこういう話題を振ってくる。
お断りします、と喉まで出かかった瞬間。
室長の笑顔を思い出した。
”『浄心さんをお嫁さんにもらう人は幸せ者だ』”
「…私、今まで一度も合コンに参加したことないんですけど、
それでもいいなら」
そう答えた私に、昭香さんが、ぎょっとした顔を向けた。
それもそうだろう、いつもこの手の誘いは全てお断りしている。
きっと今回もそうなるのだろうと、昭香さんは予想していたはずだ。
沈黙したエレベーターの中。
エレベーターの数字だけが黙々とカウントダウンしている。