COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

”ALWAYS”の前に着くと、すでに明かりは消えていた。


「…やってないよね」


ライトが消えた店。

雨の中、その佇まいを眺めていると
自分だけがこの世界に取り残されてしまったような不思議な気持ちになる。


イタリアンオムレツ、食べたかったな。

けど仕方ない。今日は帰ろう。

踵を返して歩き出すと、突然声をかけられた。


『あれ!?…本郷さん?』

名前を呼ばれ振り返ると、そこには春田くんが立っていた。

ちょうど勝手口から出てきたところだったようだ。

背中には黒のリュックを背負っている。


「…こんばんは」

ぺこりと会釈する。

春田くんはいつもの人懐っこい笑顔で笑うと、紺色の傘を広げた。
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