気づけば彼らの幸せはそこにあった
──冷たい手だな。



彼女の手に触れたときの1番最初の感想だった。

ひんやりと冷たい彼女の手は、本当に生きているのか不思議なほどに冷たかったように思える。



「ねぇ、君.......僕の絵のモデルになってくれないかな?」



美術部である俺。
次のコンテストの課題が人物だということで、誰かモデル担ってくれる人はいないかと学校をウロウロしていた時に見かけたのが彼女だ。

こんなことを改めて頼めるような友人もいなく、だからといってコンクールを諦めるのも嫌だった。

そんな時、ふと普段降りない階に降りた俺が見かけたのは、廊下の窓から外を眺めるロングヘアの女の子。

横顔をみた瞬間、この人の絵を描きたい。
そう直感的に思ったんだから、不思議なもんだ。

この階にいるってことは、俺よりもひとつ上の3年生ということになる。

ただ、3年生はもう卒業式を控えているのに、なぜ彼女がここにいるのかは不思議だったけど。



「え?あたし?」



彼女はすごく驚いた顔をして俺を見た。



「うん、ダメかな?」


「ダメではないけど.......」


「よっしゃ。じゃあ、こっちに来てよ!」



彼女の手を握って、美術室へと走る。

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