彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
「待って。ちょっと待って。」

沙和がまた呼び止める。

「『ハズレはない』って、付き合うのってさ、こう・・・」

なんだ、沙和は一体何を言い出すんだ・・・?

「恋、とかじゃないの?」

・・・え?

「恋?」

俺の声が裏返る。

恋とか、そんなキーワード、唐突過ぎる。

ああ、俺はお前に「恋」してる、とでも言うのか?
ああ、そうだよ、と。
そんな、いくら好きでもちょっと、恥ずかしくないか?

そりゃあ、この感情は紛れもなく「恋」だけど。

「だったら沙和は俺に『恋』してんのかよ。」

つい逆に聞いてしまった。
ごめん。

「え?」

沙和もやっぱり俺の言葉に少し引いてる。

「ほらな、そうなるだろ。」

ああ、口に出すと恥ずかしい。
恋、恋とかって・・・
してるに決まってんだろ!

俺はそれ以上その場にいるのがむず痒くて、穴に入る気持ちで「じゃ」と家の中に入ってきてしまった。

ああ、胸がキュンキュンする。

って、あれ・・・?

ってか、あれ・・・?

今の沙和の言葉って、もしかして「なんで好きでもないのにアンタと付き合わないといけないの?」っていう意味・・・?

うわ、うわ、うわ、普通に考えて、そうだよな。

1日経って冷静に考えてみたら、やっぱり付き合うの嫌になったとか?

忘れられない男がいるとか。

別れたばっかで誰でも良かったとか。

これは、絶対に振られる・・・!!

ああ、もう少しだけ、もう少しだけ、彼氏でいさせてください。

俺は、悪い思考回路に陥ってしまった。
勉強して忘れよう。
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