彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
た、た、田尻、くん?

ハッと沙和が俺の顔を見てきた。

「誰?」

つい聞いてしまった。

「夏期講習で会った東高の人なんだけど、数学聞いてたんだよね。」

一瞬で心臓をズタズタに切り裂かれたような気がした。

超進学校の男に数学を聞いていた。

それ以前に、仮にも俺と付き合っていたのに、夏期講習で会った男と連絡を取り合っていた。

え?
なんで?
なんでなんでなんで?

やばい、すげえ胸がざわざわする・・・

は?
なんで?

俺と付き合ってんじゃん。
今まで数学なら俺が教えてきたじゃん。

頭がゴジャゴジャになる。

ダメだ、スルーできない。

「俺いるじゃん。」

言ってしまった・・・。

「うん、でも平良は日中部活だから・・・。」

沙和が、「自分は悪くない」というような口調で答える。

「夜こうやってご飯食ってる時に聞けばいいじゃん。」
「うん、そう、そう。だから今日は平良に聞こうと思って。」

沙和の言葉に引っかかりを覚えた。

今日「は」?
今までは「田尻くん」に聞いてたのかよ。

「今までそいつに聞いてたの?」
「え?」

沙和が少し固まった。

そして小さく「ちょっとだけ・・・。」と言って俯く。

< 74 / 96 >

この作品をシェア

pagetop