彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
花火大会
隣町にある高校との練習試合。

圧勝というわけではないけど、いつも通りやればあっさり勝てた。

練習試合をして、昼飯食べて、午後は合同練習。
4時半までやって、やっと終了。

なんとなくみんなが焦ってるように感じる。

「今日、どうすんの?」

突然荒木が聞いてきた。

「なにが?」
「今日、花火大会じゃん。」

花火大会・・・。
ああ、そういえばもうそんな時期か。

「全然考えてなかったわ。」
「前山さんと約束してないの?」
「してねえなー。家から見えるんだよ。だから毎年ちょっと外に出て見るくらいでわざわざ約束まではしてない。」
「ふーん。」

荒木はさっさと着替え終わる。
続いて五反田も。

「6時に駅で待ち合わせなんだよ。間に合うかなー。」

五反田が言う。
そっか、みんな彼女と観に行くもんなのか。

彼女、かあ・・・。

昨日の夜のことを思い出す。

田尻。
東高の田尻。

どんな奴なんだろ。
かっこいいのかなあ。

東高だから頭いいのは分かるけど。

俺、全てにおいて完敗かもしれない。

みんながテキパキと着替えを終えたのか、いつもより少し早く解散となった。
花火大会がそんなに楽しみなのか。

俺と沙和の間で、そんな話題出なかったな。

沙和、もしかして田尻と・・・

急いでネガティヴ過ぎる妄想を振り払う。
ダメだ、ダメだダメだダメだ。
彼女を疑うなんてダメだ。

信じるんだ、沙和を。

たぶん沙和のことだから、花火大会なんて全然興味なくて、いつも通り家で飯食ってるはずだ。

そしてまた今年も店からちょっと外に出て他のお客さんたちと一緒に眺めればいい。

俺たちは今までそうしてきた。

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