彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
夕暮れの密室
17時20分。
駅に着いた。

家帰ってとりあえず寝よう。
そう思って改札を出た時だった。

「たいら!」

突然いつもの声で呼ばれた。
改札すぐのところに珍しく沙和がいた。

「おっ、どうした?」
「暇だから来てみた。」

突然の事態。

沙和の方から来てくれたのっていつぶりだろう。

試合で負けた時は、俺が店に行かなかったからだろうし、ああ、あれだ、壮行会の時に帽子にメッセージ書いてもらった時以来だ。

沙和の方から俺に歩み寄ってくれた。

「珍しいね。」

俺は平然を装う。

沙和が、俺を駅で待っていた。

待てよ、今絶対汗臭いと思うんだけど。
シャワー浴びてから会いたかった・・・

でも待っててくれたのはサプライズだし、超嬉しい。

これって、これって、どういうこと?

今からデート?
うちに来るってこと?

「俺、家でシャワー浴びるけど。」

少し確認も兼ねて言ってみた。

「ああ、じゃあ平良の部屋で待つよ。」

沙和がさらりと答える。

「ふうん。」と答えてはみたものの脳内パニック。

まじか。
俺の部屋にやっぱり来るんだ。

俺の部活が終わるのを沙和が待ってるなんて初めてだ。

な、何する、俺。
部屋?
俺の部屋デート?

密室に2人・・・。

さっきまでの部活の会話を思い出す。

もしかして、沙和、俺から手を出されるの待ってる?

でも沙和に限って、それはない。
「何してんの?」って冷たく言われるのが常だ。

でももしかして、沙和はやっぱり経験済みで、今までの男たちとはすぐにやってきたから・・・
ダメだ、ダメだダメだ。

俺が初めての男だって信じたい。

もしや、田尻、夏期講習で会ったっていうのも嘘かもしれない。

ダメだ、ダメだダメだ。

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