素直になれない夏の終わり

「……またもう、勝手に……」

「と言いつつも、なっちゃんはいつもチェーンはかけずにおいてくれるんだよね。俺が来ることわかってるから。でも、女の子の一人暮らしでチェーンなしは危ないと思うんだ。と言うわけで、次からはモーニングコールするから、なっちゃんが中から鍵を開けてくれるっていうシステムにするのはどう?」

「嫌だ。そんなことで起きたくないし、津田くんを自分から招き入れるっていうのもなんか嫌だし。と言うわけで、次からは“忘れず”チェーンをかけるから、津田くんはもう来なくていい」


“忘れず”ね、ほんと素直じゃない。と津田が笑うと、チンっと軽快な音が部屋に響く。


「あっ、パンが焼けた。ほら、なっちゃん。早く支度しておいで」


音がした途端、津田は夏歩から視線を外してキッチンに向き直る。

軽快な音を鳴らしたのは、夏歩には宝の持ち腐れとも言うべき、オーブン機能も付いている電子レンジ。

今までは買ってきたお弁当やお惣菜を温めることにしか使われることのなかった電子レンジを開けて、津田は焼けた食パンを取り出す。

そんな津田をしばらく眺めていた夏歩は、ふと思い立ってスマートフォンで時間を確認し、その後急いでベッドから降りる。
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