【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~

「尊さんがお好きなら……これからも、綺麗なまま伸ばせるよう、努力します」

鏡越しの彼に向かってそう告げると、彼は優しげに目元を緩めて微笑んだ。

「いいな、そういうの。妻が俺色に染まっていく感じ」

「……本当にそうかもしれません。ピアスの件もさっきお風呂の中でやっと決心がついたんですけど、自分を変えるのなら、尊さんの手でそうされたいなって思ったんです。これから夫となるあなたに、私を変えてほしいって」

「美織……」

尊さんはぽつりと呟き、突然私の肩に腕を回して、背後からぎゅっと抱きしめてきた。

薄いシルクのパジャマ越しに感じる彼の体温は熱く、心拍数が跳ね上がる。そしてなにより恥ずかしいのは、目の前の鏡に密着する自分たちの姿が映っていることだ。

鏡の中の私は素肌の尊さんに抱きしめられて真っ赤になり、瞳にはうっすら涙まで浮かべている。他の誰にも見せたことのない……自分すら初めて見る表情だ。

どうして私、こんな熱に浮かされたような顔を――。

「お前は……箱入りで軟弱なお嬢様かと思えば、無鉄砲に冒険するし、意外と芯が強くて頑固だし。かと思えば、俺の手で自分を変えてほしいだなんてしおらしいことを言うんだから、ギャップだらけで参るよ。……面白くて興味が尽きない」

吐息交じりに語る低い声に鼓膜をくすぐられ、胸の高鳴りが一層高まっていく。

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