気づけばいつも探してた
15.何かの始りと終わり
15.何かの始りと終わり

正月明けというのは、年末以上に忙しくて時間の流れが速い。

一月は行く、二月は逃げる、三月は去る、とはよく言ったものだ。

恐らく二月、三月は一月以上に早く過ぎ去っていくのかと思うとぞっとする。

年明け早々、萌の後任も決まり引継ぎが始まっていた。

萌が幼い横顔で自分よりも年上の中途採用で選ばれた新入社員に仕事を引き継いでいる様子はなんだかおかしくて笑ってしまう。

それと同時に一月末でそんな萌の姿も見れなくなるのかと思うと、やはり寂しい気持ちは否めなかった。

何かの始りは何かの終わりを意味してる。

そして、何かの終わりもまた何かの始りを意味するんだ。

翔からの告白、そして竹部さんからのプロポーズは何かの始りと終わりを示してるのだろうか。

「ほんと、最近の若い子は何考えてるんだかわからないわ」

両腕を組んだ立花さんがふぅーと大きなため息をついて私のデスクの横にやってきて言った。

「萌のことですか?」

パソコンに視線を向けたままそっけなく答える。

「そうよ。せっかく私が入社してから懇切丁寧に仕事を一から十まで教えてあげたってのに、一年もしないうちに退職だなんて、私の時間を返してちょうだいって感じ」

そう言うと、真っ赤な口をとがらして首を横にふった。

まぁ、その引き金を引いたのは紛れもなく立花さんでしょう?と思いながら、彼女に見つからないように軽く笑う。

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