気づけばいつも探してた
二人揃ったのを見計らって、店員がメニューをうかがいにくる。

一緒にワインを選び、案の定一番高いフルコースを翔は頼んだ。

友達という関係なのに、なぜだか翔はいつも私には払わせない。なのに、一番高いフルコースだなんて、少し申し訳なく思いつつ。

不平等だよな、なんて一瞬考えるけど、おいしい料理が出てくるとそんなことも一瞬で忘れてしまう。

これもきっと翔の懐の深さなんだろうと称賛しておこう。

運ばれてきた赤いワインで乾杯すると、珍しく翔がしみじみと言った。

「会うの久しぶりだよね」

ほんのり酸味の効いたワインが喉の奥を滑り落ちていく。

「うん。そうだね。LINEや電話もほとんどしてないし、久しぶりって言葉がまさにふさわしいわ。忙しかったの?」

「まあね。ちょっと内部異動があったりでさ、前より忙しくなったかな」

内部異動かぁ。

どんな仕事に変わったんだろう。転勤なんてこともあるんだろうか?

これだけ一緒にいたら、そろそろお互いの素性知らせてもいいのになかなか言い出せないでいる。

ひょっとしたら翔の方が訳ありだったりして……。

ワイングラスをテーブルに置き、翔の顔を正面から見据える。

「今日はほんとタイムリーだったわ。もう腹の虫がおさまらなくって誰かと飲みに行きたい気分だったの」

「へー、またエリート外科医と何かあった?」

翔はちゃかすような表情で笑うと、ワイングラスを傾けた。

「彼とは全く関係ないの。職場の先輩のこと!」

私は身を乗り出して頬を膨らます。

そんな私の様子を愉快そうな笑みを浮かべて翔は顎に手を置き、椅子に深く座りなおした。
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