気づけばいつも探してた
病棟のカフェスペースの時計を見ると、18時過ぎ。

翔は仕事終わってるだろうか。

って、どんな仕事してるかもわからないんだけどとりあえず電話をかけてみる。

呼び出し音が何度も鳴り響く中、なかなか翔は出なかった。

まだ仕事中かな。

そう思った時、『はい』と低音の翔の声がした。

「翔?ごめん、今仕事?」

『いや、大丈夫だけど、この場所じゃなんだからちょっと移動してすぐにかけなおすよ』

私の返事を待たぬまますぐに電話が切れ、数分後翔から電話がかかってきた。

「ごめんね、仕事中に」

『どうした?また外科医か?』

「違うって」

思わず吹き出す。

「あのね、実はこないだ翔が言ってくれてたことなんだけど」

私は今祖母を見舞いに来ていて、姫路城に行きたいと告げられた話を手短に伝えた。

「急だからダメ元で電話かけてみた」

『来週か……』

翔はしばらく考えている様子だったけれど、『オッケー。調整してみる。返事は明日まで待ってもらえる?』と明るい声で言った。

「本当に?」

『なんとかなるさ。それに、俺も美南のおばあちゃんに会いたいし』

よくわからないけれど、この間の時と同じで胸の奥の方が温かく優しく膨らんでいくような感覚になる。

「……ありがとう」

『いいえ、どういたしまして。いずれにせよ、姫路で日帰りはきついから至急一泊どこか手配しておくよ。ホテルの当があるんだけど、押さえるのに氏名が必要なんだ。言いたくないだろうけど、美南の苗字とおばあちゃんの名前も教えてもらえる?』

『わかった、そういうことなら仕方ないもの。私は矢田美南、祖母は川島静子よ』

『さんきゅう。このホテルはすぐ隣が病院なんだ。その方が美南も安心だろう?病院にも前もって何かあった時には対応してもらえるよう根回ししておくよ』

病院に根回ししておく?

「え?それって?」

『じゃ、もう行かなくちゃ。ごめん、また連絡する』

電話は【?】マークのついた私をそのままに切れてしまった。

翔って一体?何者なの……?

< 71 / 186 >

この作品をシェア

pagetop