イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。

忍び寄る影


波乱のデートから数日後。

私はいつものメンバーで昼食をとったあとも、ランチルームに残って談笑していた。

学園の昼休みは間近に迫った美術館での校外学習の話で持ちきり。

それを耳にした剣ちゃんはだるそうに頬づえをつく。


「美術館なんて興味ねぇ。俺はパス」

「休んじゃダメだからね? ただでさえ剣ちゃん、テスト再試験だったんだし」

「英語、苦手なんだよ」

「だから、そのぶん出席日数は稼いでおかないと。それに私も行くんだし……その、一緒に回りたいなって」


こっちが本音だった私は、もじもじしながら伝える。

すると剣ちゃんは一瞬ぎょっとした顔をして、やがて前髪を握りしめると目をそむける。


「……はぁ、仕方ねぇな」

「やった!」


ついはしゃいでしまう私に、剣ちゃんは照れくさそうに飲んでいたカフェオレのストローを噛む。

それを観察していた学くんは意外という顔つきをして、腕を組んだ。


「俺はてっきり森泉のほうが矢神に面倒を見てもらっているのだと思っていたんだがな。逆だったのか」

「愛ぴょんの記念物級の天然さは、不良を更生する力があるんだね。いつか、ケンケンも閣下なみの優等生になるんじゃない?」

「最近は授業中も寝ていないようだしな」


感心したように萌ちゃんに賛同する学くんに、剣ちゃんは気まずそうに答える。


「俺が寝てたら、愛菜が危ないときにすぐ助けられねぇだろ。最近、白昼堂々襲ってくるしよ」

それを聞いた萌ちゃんが目をキラキラさせる。

「愛ですなあ。じゃあ、そんなケンケンに、いいものを見せてあげましょう」


萌ちゃんは「じゃじゃーん」と言って、ロリータファッションに身を包んだ私の写真を見せる。

それを目にした剣ちゃんは固まった。

どうしたんだろう?

気にはなりつつも、私はスマホを手に萌ちゃんにお願いする。


「萌ちゃん、ふたりで写ってる写真があったら、私に送ってほしいな」

「もちろんだよ! ケンケンも欲しい? 欲しいでしょう~?」


写真をちらつかせながら迫る萌ちゃんに、剣ちゃんは「ぐっ」とうめいて、必死に目をそらしている。


「うふふ」


萌ちゃんが不気味な笑みを浮かべると、学くんは眉根を寄せた。


「なにが『うふふ』だ。気色悪い」


「だってー、ケンケンの反応がかわいくって。そうだ! 愛ぴょん、帰ったらこれ着てみてね」


萌ちゃんが【ヴェラ】のロゴが入ったかわいい包みを私に手渡す。


「これはなに?」

「愛ぴょんへのプレゼント! うちの新作だから、着たら写真撮って送ってね」


ずっとなにか持ち歩いてるなとは思ってたけど、私へのプレゼントだったんだ。


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