イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「第一、王子ひとり来たくらいでここまでするか? これだから金持ち学園は」


腕を組んで渋い顔をする剣ちゃんに、学くんは「当然だろう」と言いながらディオくんと歩いてくる。


「着物も王子に着てもらえれば、それだけでブランドの価値は上がるからな。ニュースにでもなってみろ。日本文化の宣伝、経済効果は絶大だ」

「お前と話してると、ときどき年齢詐称してんじゃねぇかって疑うわ」


剣ちゃんが怪訝な眼差しを学くんに向ける。

そのとき、ディオくんが私の手をエスコートするように取った。


「愛菜、この後も私は学園内の出し物を見て回ります。愛菜も一緒に行きましょう」

「あ、でも……私はここで出し物の手伝いをしないといけないから……」


やんわりと断ろうとしていたら、学くんは眼鏡を指で押し上げながらため息をつく。


「仕方がない、森泉も手伝ってくれ。生徒会から特別に仕事を言い渡したと、クラスの人間には伝えておく」

「わ、わかった」


学くんも大変だな。
できる限り、協力してあげよう。

そう思っていると、剣ちゃんが私の隣に並ぶ。


「それなら俺も行く。学、俺のサボる口実も適当に根回ししろよ」

「あぁ、お前なら森泉にくっついてくると思っていた。クラスの人間に説明しておこう」


さすが学くん。
剣ちゃんは私のボディーだもんね。
一緒に行動させてもらえるのは、ありがたいよ。


「剣斗も来るんですか」

「不満か、ディオ」

「いいえ。これで正々堂々、愛菜の心を手に入れられマス。むしろ、好都合です」


それを耳にした剣ちゃんは、すかさず私とディオくんの間に立つ。


「これだから、目が離せねぇんだよ」

「ガードが固いですね」


バチバチとした視線を交えるふたり。

学くんは何度ついたかわからないため息をこぼして、私を振り返る。


「行くぞ、森泉。あいつらに付き合っていたら日が暮れる。お前が歩き出せば、自然とついてくるだろう」

「はは……苦労人だね、学くんは」


学くんが言ったように、私が教室の戸口に歩いていくと言い争いをしながら剣ちゃんたちも追ってきた。


「予定が大幅に遅れている。これではすべての出し物を回り切れるかわからんな」


学くんは眉間にしわを寄せながら、出し物リストに目を走らせる。


「ただ、森泉がいればスムーズに進みそうだ。あいつらの調教師だと思って、うまくコントロールしてくれ」

「尽力はしてみます……」


学くんの無茶ぶりが増してる。

きっと、相当なストレスがかかってるんだろうな。

私たちは萌ちゃんに見送られながら、廊下の外に出る。

すると、瞬く間に女の子たちに囲まれてしまった。


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