イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「ああもお見合いを勧められると、断り続けるのもちょっと疲れちゃうっていうか……」

バルコニーの手すりに手をついて空を仰ぐと、そこには満天の星が煌いている。

「あ、綺麗……」

思わず星に目を奪われていたとき――。

「森泉の娘だな」

バルコニーの両側にある中庭に続く階段から、黒いマスクをかぶった男たちがぞろぞろと現れる。


「えっ、なに?」


ただならぬ雰囲気に、喉がキュッと締まって声が出ない。

そんな私に気づいたのか、男たちは威圧的な声で告げる。


「そうだ、静かにしていろよ? 騒がなければ、無傷で連れてってやる」


そう言って、チラリと見せてきたのは拳銃だった。

ど、どうしようっ。
あれって、きっと本物だよね。


私がそう断言できるのは、これまでにも政治家の娘だからと命の危険に巻き込まれることが多々あったから。

私はそのときの記憶を失っているのだけれど、小学生のときには誘拐されたこともあったらしい。

お医者さんによると、精神的なショックが原因なのだとか……。
だからか、お父さんもお母さんも当時のことを話してはくれない。


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