君は好きの麻薬
 そんな私が唯一縛られることなく過ごせる時間、それは家ではなく学校であった。

何故家ではないのか…それは後々分かるだろう。


「暦!学食行こう!」


 元気塊のような彼女は私の大切な友人である円谷玲。

自分大好き人間でとにかく前向きだ。

独特な性格と世界観を持っていて、たまに彼女について行けない時がある。

私には持っていない物を持っている。

そんな彼女のことが私は大好きだ。


「カレー食べたいんだけど。食べた過ぎてキレそう。」

「そんなことでキレないの。」


何故このタイミングで急にキレそうになるのか全くわからない。

そんな女の子である。

玲はカレーを私はサンドウィッチを無事に買うことができ、たまたま近くのカウンター席が空いていたため、横に並んでそこに座る。


「ところでさ、先輩とのデートどうだったの?」


大体の答えは分かっているはずなのに、確認をするかのように投げかけられた質問。

横目で彼女を見ると、何事もないかのようにカレーを頬張っている。

私の手にはまだ手をつけられていないサンドウィッチ。


「そんなことなら、さっさと別れちゃえば良いのに。」

「なんでそんなこと言うの!」

「それなら聞くけど、先輩といて楽しい?暦は先輩といる時の自分、好き?」


何も言えない。

時が止まっているかのようにさえ感じるが、玲がカレーを食べ続けているので時が止まっているなんてことはないらしい。減っていく玲のカレー。

変わらない私のサンドウィッチ。

どんどん前に進んでいく玲。

止まったままの私。

これから一体どうしていけばいいのか。

今すぐ明確な答えが欲しい。


「答えは出てるでしょ。暦はそれを認めたくないだけ。早く自分に正直になれるといいね。ごちそうさま。次の実験の準備、私たちの班だから先に行ってるね。」

ご飯しっかり食べなよ。

そう言い残して、彼女は走って実験の塔に向かって行った。

食べたばかりだと言うのに、気持ち悪くないのだろうか。

それに…


「食器置きっ放しだし。」


まぁいいか。

ありがとう玲。
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