月夜に笑った悪魔


音声を聞けばまた込みあげてくる怒り。

私は襖の開いていた彼の部屋へと無言で入って、彼が手にしていたボイスレコーダーを奪うと自分の鞄の中へと突っ込んだ。




「大っ嫌い!!」


暁に向けてそれだけ言えば、すぐに居間へと向かってご飯を食べた。







「まじで悪かったって」
「…………」


「いい加減、機嫌なおせよ」
「……絶対悪いと思ってないし、反省もしてないでしょ」


「悪いと思ってるし、反省してる」
「…………」




さっきから、同じ会話の繰り返し。
これでもう、3回目。


朝食中、暁を無視していれば彼はまったく反省していない顔で謝ってきたんだ。


そんなの、許せるわけない……!





「俺もう行くから、またあとでな」


彼は玄関でひらひらと手を振ると、組員に差し出された傘を受け取って。


それをさして、雨の中歩いていく。



今日は、早朝から降っていた雨。

……暁はいつもバイクで学校に行っていたけど、今日は歩きみたい。
雨だから……?




「美鈴さん、車にどうぞ」


彼の後ろ姿を見ていれば、いつも私の送迎をしてくれる組員の人が声をかけてきて。



「あの、私も今日は歩いていきます!」


私はそう返して急いで靴を履き、玄関を飛び出した。

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