トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜

umbrella〜黒い傘〜



「陽平......っ!!」

「奈月……こっちにおいで……」

両手を広げて優しい笑顔を向けて私にささやく……

「でも、私……」

「大丈夫、大丈夫だから……」


そんな陽平の言葉に、私はゆっくりと陽平の方へ向かって歩き出す。

「陽平、ありがとう」


そう陽平に抱きつこうとした時、陽平は私の前から消えた……。


「ようへいーーーっ!!!」

目の前にいた陽平がどんどん遠くなっていく、追いかけても追いかけてもちっとも追いつけない。

「待ってーーー!!!」


ーーーーっ!!


その瞬間、私は飛び起きてベッドの上に座り込む。


「夢……か……」

その瞬間、再びこみ上げてくる悲しい思いを抑えきれず泣いた。

いっそのこと、この現実が夢だったらいいのに……と。


でもこの幸せだった日々を壊したのは私で……

いや、違う、この私の中にあるもっと深いものが私たちを壊した。


私だけど私じゃない。

誰を責めればいいのか、誰を恨めばいいのか……。


「いや……いやーーーっ!!!!」


私は、ベッドの上でただただ叫んだ……


「いや、いや……」

溢れだす涙、止まらない震え……

初めて失った恋……

それは清く淡い恋……。


もう陽平の笑顔が私に向けられる事はない

綺麗で吸い込まれそうな瞳で見つめれることも

二度とない……


2人で笑いあった時間
手を繋いで散歩した夜道

すべて失ってしまったんだ……


そう私たちは、終わってしまった……。

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