青の秘密を忘れない
第17章 私たちは青かった
待ち合わせの時間、三十分前に着いたにも関わらず青井君は改札前に立っていた。

それがかえって、本当に今日で終わりなの?と不安にさせる。

私たちは目が合うと無言で歩き出し、以前一緒に行った公園に向かう。
午前中だからかカップルはほとんどおらず、ランニングをしている人や散歩している犬がちらほら遠くを過ぎていくだけだ。


「私、青井君が好きだよ」

青井君の言葉を聞いたら心が折れて話せなくなる、と思って先に話し出す。
私は俯いている彼の左手を握り、見つめた。

「青井君が別れないでって言ったからそのままにしてたけど、別れていいならそうする。
慰謝料は私が全部払ったっていいと思ってる。
確かに家族や友達に縁を切られることがあるかも知れない。
でも、本当に青井君が私を好きなら、私は絶対青井君と一緒にいるから……」

一気にそこまで話しきると、思わず涙が溢れそうになる。
泣いてはだめだ、ちゃんと話したい。
私は唇を噛み締めた。

「ありがとう、ございます……」

青井君は私の右手を上からそっと包み込む。

「僕も、篠宮さんが好きですよ。
……だから、終わりにしたいんです」

なんで?と言いかけて、一言も聞き漏らしたくなくて私は黙った。
青井君は意を決したように話し出す。

「大好きだけど、愛か分からないんです。
愛かどうか確かめる時間も環境も少なすぎて」

青井君は私の手つかんだまま、そっと私の膝の上に置いて離した。

「それに篠宮さんは、どんなときでも僕のそばにいてくれるし守ってくれるって言ってくれましたけど……実際そうだと思うんですけど……。
それじゃ僕が苦しいんです」

青井君は苦しそうな顔でこちらを真っ直ぐ見つめた。

「もちろん自分が傷付くのも怖いけど、大好きな人が傷付くのを間近で見守るのが怖い。
この前、篠宮さんの旦那さんを見て怖くなりました。
もし篠宮さんが僕を選んでくれたら、この人が篠宮さんや僕に傷つけられるんだって。
逆に旦那さんや周りの人たちが篠宮さんを傷付けてくると思ったら怖かった」


「篠宮さんを傷付ける覚悟がないんです。
大好きだからこそ、一緒にいられない」


堪えようと思ってた涙はどうしようもなく流れて、ブルーサファイアのネックレスを濡らす。
そこからどんどん体が冷えていく気がした。
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