エリート御曹司と愛され束縛同居
物心ついた時からそばにいた幼馴染み。


普段は何事にも無頓着なくせに、俺が揶揄われたりクラスメイトに泣かされた時は、小さな身体で誰よりも怒り、守ってくれた。

今、思い返してみても、澪に守られてばかりだった幼い頃の俺は、ずいぶん頼りない少年だった。

当時の俺に、もっとしっかりしろよ、と言ってやりたいくらいだ。


泣き虫で身体も弱かった俺を、澪は一度も馬鹿にしなかった。

誰よりも自分の感情に正直で、そのくせ面倒見がよい幼馴染みは、クラスの皆から好かれていた。


澪の兄である、凪さんも年の離れた妹をなにより大事に慈しんでいた。

俺のことも気にはかけてくれたけれど、澪と一緒にいるからそのついで、と言わんばかりだったのは、まあ仕方がない。


元々、世話焼きのきらいがある岩瀬兄妹とはそんな風にともに成長してきた。

実家がそれなりの規模で事業を営んでいるので、俺は、“後継ぎ”としての教育を幼い頃から受けてきた。

それを苦に思ったことはない。

そこまで勉強が嫌いだったわけでもなかったし、両親は俺に対して『後を継げ』とはっきり言うような真似もしなかった。

ただ、働く両親の後ろ姿を見て育ったせいか、俺は佐久間の本家のひとり息子としての道を歩くことを自然と選び、その先にある未来を受け入れてきた。
< 180 / 199 >

この作品をシェア

pagetop