初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
翌朝。

柊哉さんはちゃんと帰宅していた。

疲れているだろうに表に出さず、爽やかな笑顔を向けて来る。

「香子、おはよう」

「柊哉さん、おはよう」

いつも通りの朝。朝食をふたりでテーブルに並べる。

頂きますをして食事を始める。

「昨日は何時頃帰って来たんだ?」

「十一時頃。柊哉さんは?」

「二時過ぎだったかな。真田と飲んでた」

「真田課長と本当に仲がいいんだね」

「同期だからな」

少しだけ胸がずきりとした。また風花さんを思い出してしまったのだ。

いえ、またじゃない。
彼女を知ってからいつだって、その存在が気になっているのだから。

「……あの、柊哉さん」

箸を置き呼びかける。

「どうした?」

「週末は休める? 話したいことがあるの」

「話?」

柊哉さんの顔が強張る。珍しく動揺しているように見えた。

「柊哉さん?」

「……土日休みにする。話すのは家でいいのか?」

気のせいだったのか、もういつも通りの彼だ。

「うん、大丈夫。それでお願いします」

柊哉さんは頷く。

良かった……一歩進めたような気がしてほっとした。

< 164 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop