初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~

退職の準備をしながらの日々は瞬く間に過ぎ、三月末の退職日を迎えた。

皆の前で挨拶をして花を貰うと、胸がいっぱいになる。

四年しいかいなかったけれど、自分なりに一生懸命働いたし、良い人たちと巡り合えた。

毎日通った大切な場所でもう二度とここで働けないのだと思うと寂しさが襲って来た。

だけど、就業後は総務部のみんなと仕事で関係した他部署の人が、送別会を開催してくれて、楽しく過ごした。


柊哉さんとの結婚については、言わないまま退職する。

少し迷ったけど、言えば皆を驚かせてしまうし、仕事がやり辛くなる心配があったので、私が辞めた後に、真田課長が知らせることになった。

開始から一時間以上が立ち、酔っ払いが増えて来た頃、進藤君がお酒を手に私の隣の席にやって来た。

「お疲れ」

「お疲れ様。進藤君、今日は来てくれてありがとうね」

「同期なんだから当然。でも桐ケ谷がこんなに早く辞めるとは思わなかった」

「うん……あの、ちょっといい?」

私は進藤君を、宴会の場の外に誘った。

彼は意外そうにしながらも、付いて来てくれる。

「あれ? ふたりでどこ行くの? なんか怪しくない?」

席を外す私たちを目ざとく見つけた先輩社員が揶揄って来たけれど、真田課長が窘めてくれたので、そのすきに無事に脱出した。

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