初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
かと言って、何をどうすればいいのか分からない。

これまで恋人のいた経験のない私にとっては何もかもが未知の経験で、緊張のあまり呼吸さえままならなくなる。

されるがままでいる内に、ベッドに仰向けに倒され唇を塞がれた。

生まれて初めてのキスをしている。
触れ合う唇は、思ったよりひんやりしていた。

けれどキスが深まるにつれ、余計な考えを巡らす余裕はなくなっていく。

肌ざわりの良いバスローブはいつのまにか取り払われ、彼の体温を直に感じていた。

緊張で震えているはずなのに、身体には熱が積もり、ぞくりとした何かが身体を駆け巡る。

そんな私を見下ろしながら、彼が囁く。

「今夜は止めたほうがいいか?」

そう言うのは、これ以上先に進むのは無理だと思ったから?

たしかに私の心臓は、ドキドキと息苦しさを覚える程、脈打っている。

でも、私たちは夫婦になったのだから、この行為は義務のはず。怖いからと逃げだすわけにはいかない。

「私、大丈夫です。どうかこのまま……」

「……分かった」


それが、私たちふたりの、この夜最後の会話になった。

行為は再開され、私はまともな言葉を発せなくなったから――――。

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